梨づくりの一年

秋の土つくり


梨の収穫を終えた樹には、青々としたたくさんの葉が残っています。これは来年の花を咲かせたり、樹自身が元気に生きてゆくための体力を作るためです。葉とともに根も活発に活動しています。この働きを助けるために少しだけ肥料を施します。収穫後に肥料を施すことを「おれいごえ(御礼肥)」と呼んでいます

冬の土つくり


木枯らしが吹く頃、葉は自分の持つ養分を、樹に送ります。養分が少なくなった葉は、黄色く色づき一気に落ちます。落葉が終わり根の働きが弱くなった頃、樹の改植や苗木の定植を行います。またこの時期、堆肥をすき込んだり、深い穴を掘って埋めたりして来春以降いつでも樹が養分を取り込めるような、土壌改良を行います。同時に来春の栄養となる肥料を施します。この肥料は基礎なる肥料「もとひ(基肥)」とよんでいます。

整枝剪定

整枝剪定は良い実を畑全体にむらなく散りばめる為に行います。
実際には、徒長してしまった枝、古くなり実をつけなくなった枝を切除し、将来良い実が採れる枝を残し、配置します。品種や樹の特性、畑地の土壌などを考慮しながらすすめます。
整枝剪定は冬だけで終わらせることは難しく、芽の整理・枝の細かい配置などは翌年の夏まで続きます。

花粉交配


梨は自分の花同士では受精が殆どできません。毎年良質で大きな実を安定的に収穫するために花粉交配を行います。家庭で使用する耳かきの後ろについているフワフワに似た「ぼんてん棒」とよぶ器具でひとつひとつの花に花粉をつけてゆきます。
樹の部位によって花の咲く時期は異なり、花の寿命は5日程度です。そのため時間に追われ、一年の中で最も忙しない作業です。

花粉作り

花粉交配戸へ移行して、花粉つくりを行います。花粉用の樹から花を摘み、専用の機械で葯を取り出します。暖かい部屋に葯を広げておくと約一日で葯が開き、黄色い花粉が出てきます。

この花粉は冷凍して翌年以降の花粉交配に使用します。保存しておくことにより、毎年異なる開花時期に対応できるようにしています。

一次摘果


花粉交配から20日ほどすると、小豆大に実は育ちます。
この段階で、育ちの悪い実や、美味しくなる場所でない実を切除します。
一つの果叢(花芽だった場所)からは7~8の花が咲き、交配が順調に施された花は実になります。品種によっては一果叢に8個の実がなる場合もあります。しかしこのまま放置すると、養分を競合し美味しい果実になりません。そのため、この時期には一果叢に一つの実を残す摘果を行い、養分がその実に集中するように調整します。

仕上摘果

一次摘果から20日くらいすると、更に実は育ちパチンコ玉の大きさに育ちます。樹の調子を考慮し、全体のバランスをみながら、良い実を残し、最終的な着果数に調整してゆきます。

袋掛け


仕上げ摘果を終えた畑から、実に袋をかけてゆきます。袋は農薬や雨などで実が汚れることを防止します。また、病害虫の被害から実を守り、日焼けの防止にも役立つ資材もあり、生産者により工夫をして施しています。

初夏の管理


袋掛が終わり、収穫までの期間は、病害虫防除・潅水・夏期誘引剪定・施肥を気象条件や、樹の様子を見ながら行います。どれも重要な作業ですが、夏期誘引は冬の剪定作業の続きともいえる作業で、2年後3年後のために、計画的かつ処方的に行う作業です

収穫作業


収穫1月前後から、実は急激に大きくなります。開花から積算温度が約3000になると梨は収穫期を迎えます。
収穫予定の10日くらい前に果実袋の尻を破ります。この作業をすることで、熟期を判断し食べ頃の梨を収穫できるようになります。
毎日、同じ畑で収穫を繰り返すことは大変な労力ですが、特産の稲城梨は熟期が急にすすむこともあり、非常に重要です

選果作業


稲城の梨生産組合には共同選果場がありません。
個々の農家による個別選果、個別販売の形態をとっています。そのため各園が工夫を凝らし、美味しい梨つくりを行っています。収穫した梨は熟練した生産者の目で選別され皆様へお届けさせていただいております。